刺し子とは、主に東北地方で盛んに伝えられてきた和刺繍の技法です。元々は冬の厳寒から少しでも衣服を厚くして身を守るため、また当時は布物が貴重だったので長持ちさせるための技術でした。現在は刺し子で防寒、補強をする必要はなくなりましたが、各地方で発展した刺し子の技法は今も人々を魅了し続けています。

日本三大刺し子とその特徴

刺し子は各地域でその技法が伝えられてきましたが、今なお有名なのが「津軽こぎん刺し」「南部菱刺し」「庄内刺し子」の日本三大刺し子です。それぞれが独特の技法と図案を持ち、独自の流派として知られています。

・津軽こぎん刺しの特徴
青森県津軽地方に伝わる刺し子です。こぎんというのは農作業に使う野良着のことであり、刺し子の元々の由来がしのばれます。
こぎん刺しの特徴は、縦の織目に対し奇数で刺していくことです。また伝統的に濃い藍染の麻布に白の木綿糸で刺すことが多く、一般的にイメージされる藍地に白糸の刺し子はこのこぎん刺しから来ています。
モチーフは300種類以上あり、蝶や花などの身近な自然や馬のくつわなど農業に関わる図案が多く見られます。

・南部菱刺し
青森県南部地方に伝わる刺し子です。菱刺しはモチーフをすべて菱模様にして刺したことからこの名がついています。元々は浅い藍染の麻布に紺と白の糸で刺していましたが、大正時代に染め糸が流通したことで様々な色を使った菱刺しが作られるようになりました。
南部菱刺しはこぎん刺しとは逆に偶数の目で刺していきます。また菱刺しのモチーフは400種類以上存在しますが、そのいずれもが菱形のデザインになっています。この菱形を積み重ねるのが南部菱刺しの特徴となるデザインです。

・庄内刺し子
山形県の庄内地方に伝わる刺し子です。青森に伝わる二つの刺し子と最も違う点は、庄内地方がかつて北前船の重要な寄港地であり、江戸や西国で織られた木綿布が入ってきていたことです。なので庄内刺し子はこぎん刺しや菱刺しとは違い、木綿布に刺したものが多くあります。
庄内刺し子の特徴は、身近なものをパターン化した豊かな種類の紋様です。花十字、網代、麻の葉、武田菱といった現在から見てもデザイン性の高いものが数多く残されています。

初心者でも簡単にできる刺し子の方法

こぎん刺しが近年ブームになったように、今でも刺し子を楽しんでいる人はたくさんいます。そのための道具も簡単にそろえることができますので、まずは簡単な模様を刺して日用品に仕立て楽しんでみてください。目を数えていく必要があるこぎん刺しや菱刺しとは違い、模様に沿って波縫いするだけの刺し子が初心者にはお勧めです。

材料
□刺し子布またはクロスステッチ用布
目の詰まった木綿布でも刺せます。
□刺し子糸、刺し子針
刺し子用の刺繍糸と針です。ない場合は普通の刺繍糸と針でも代用できます。
□はさみ
□チャコペーパー

刺し模様があらかじめ布にプリントしてある刺し子布もありますが、刺し子の本やインターネットにも魅力的な模様が掲載されています。インターネットからプリントアウトして使う場合は著作権フリーの無料図案であるかどうかを確認してください。

刺し方
① チャコペーパーを使い、図案を布に書き写します。
② 図案の刺し始めより3~4目分先に裏側から針を入れ、刺し始めに向けて目を少し小さめに刺します。刺し始めまで進んだらそのまま針を返して刺し進めます。刺し始めの裏側に残った糸は目立たないようにカットします。
③ 糸を継ぎ足す時や色換えをするときは、表に出る目を小さめにして隠すように3~4針刺し戻してから裏側に針を通し糸を切ります。玉止めは必要ありません。糸を替えたら次の目の3~4目先から戻るように刺していき、糸替えの次の目まで戻ったらまた針を返して刺し進めていきます。
④ 刺し終わりは糸替えの時と同様にまた3目ほど刺し戻して裏側に糸を通し、残りの糸はカットします。

まとめ

刺し子はふきんなどにもよく使われますが、バッグやポーチなどの小物に仕立てたり、あるいはテーブルクロスなどのインテリアとして楽しむのも素敵です。当時の人々のように、デザイン性の高い刺し子を普段使いのアイテムにスマートに取り入れてみてください。